高松高等裁判所 昭和26年(う)939号 判決
論旨は原判決には刑事訴訟法第三百七十八条第三号に該当する違法があると主張する。仍て原判決と本件起訴状記載の公訴事実とを対照するに原判決は論旨摘録の如く公訴事実と若干異る認定をしていること所論の通りである。而して原審は本件において訴因変更等の手続を経てはいないけれども、裁判所は訴因の同一性を害せず且つ被告人の防禦に影響を及ぼさない限り審理の結果に基き訴因変更等の手続をしないで公訴事実と若干異る認定をなすことは許されるものと解しなければならない。今本件の場合につき観るに原判決は一の事実については公訴事実の犯行時間は「午前二時半頃」となつているところ審理の結果これを「午前二時頃」と認定し、二の事実については(イ)公訴事実には「被告人等は共謀の上」とあるのを共同被告人(共犯者)である山本義徳が死亡したため「被告人は山本義徳と共謀の上」と訂正し、(ロ)公訴事実中「山中晴美に云々」とあるを文章の脈絡上「山中晴美が云々」と改め、(ハ)公訴事実中「と制止されたことを憤り」とある部分を山中巡査の職務執行の点を明確にするため「と警察官等職務執行法規定により右の行為を制止しようとしたところ」と認定したものであり、以上の如き程度において裁判所が公訴事実と若干異る認定をなすことは何等訴因の同一性を容して居らず、訴因変更等の手続を要せずして審理の結果に基き認定し得るものと謂はなければならない。刑事訴訟法及び刑事訴訟規則が訴因の変更等につき厳格な手続を規定していること所論の通りであるけれども、裁判所が些かでも公訴事実と異る認定をなす場合はすべて訴因変更等の手続を要する趣旨であるとは到底考えられず、本件の場合原判決に審判の請求を受けた事件につき判決せず審判の請求を受けない事件につき判決した違法があるとはいえない。従て論旨は理由がない。